MatTek社製品のよくある質問をご紹介しております。
全般的なことについて
Q. ガラスボトディッシュの基本的な使い方は?
Q. 細胞を成長させるにはどのガラスボトムディッシュを使ったらいいですか?
Q. MatTekのガラスボトム製品を使った文献を探すにはどうすれば良いですか?
Q. 成長が思うようにいかない場合や成長を増進させるにはどうすればいいのですか?
Q. グリッド(目盛り)付のカバーガラスは何のために使用するのですか?またグリッドのサイズは?
グリッドが見えなくなったらどうしたら良いのでしょうか?
Q. ガラスボトディッシュは再使用出来ますか?
Q. 標準のガラスボトムディッシュではなくマルチウェルプレートを利用する利点は何でしょうか?
Q. ガラスボトムディッシュからカバースリップは取り外せますか?
ガラスボトムディッシュと顕微鏡との相性や技術的なこと
Q. 蛍光顕微鏡に適していますか?
Q. 微分干渉顕微鏡で使用するにはどうしたら良いでしょうか?
Q.GSDIM,dSTORM,PALM ,TIRFなどの超解像顕微鏡法にも利用出来ますか?
Q. 50mmのガラスボトムディッシュはなぜマイクロインジェクションに適していてディッシュの中の状態を一定に保つこと が出来るのでしょうか?
ガラスボトムディッシュの特性について
Q. どの厚さのカバーガラスを使用したら良いのでしょうか?どんな種類のカバーガラスの厚みがあるですか?
Q. ペトリディッシュにカバーガラスを固定するためにどのような接着剤が使用されているのでしょうか?
Q. どのくらいの温度範囲で使用出来ますか?
Q. カバーガラスはどのような特性を持っていますか?
Q. ウェルの深さは?
Q. 化学適合性は?有機溶剤を使用出来ますか?
Q. ガンマ線滅菌されているのはどのようようにわかりますか?
Q. P35G-0.170-14-Cは標準のP35G-1.5-14-Cと比べてどれだけハイトレランスなのでしょうか?どのような用途に適していますか?
コーティングについて
Q. なぜ、ポリ-l-リジンでなくポリ-d-リジンでコーティングしているのでしょうか?
Q. コラーゲンコートしたガラスボトムディッシュにはどんなタイプのコラーゲンが使用されていますか?
Q. ポリ-d-リジンやコラーゲンコートがガラスボトムディッシュの光学的性質に影響を与えますか?
特注品について
全般について
A.
MatTek社のガラスボトムディッシュはコートなし及びポリリジンあるいはコラーゲンでコートしたものがあります。全てのディッシュはガンマ線滅菌されています。
一般的な使用方法は次の通りです。
1.無菌状態の保持:無菌環境(ラミナーフローフードなど)でディッシュを開封してください。
2.平衡にした(Pre-equilibrate)ディッシュの作り方:細胞培地をいれて養生する。
2-3mLの培地をとって35mmのディッシュに、3-4mLを50mmのディッシュに 入れて15分間37℃で養生する。
3.マイクロウエルに細胞懸濁液を添加する:細胞培地と細胞をガラス面にとる。
アスピレーションで細胞培地を取り除き、細胞懸濁液(細胞培地の浮遊細胞)を250μLとって10mmのマイクロウェルに、500μLを14mmマイクロウェルに、1mlを20mmのマイクロウェルに入れる。ディッシュを1時間37℃で養生する。
4.培地の追加:1時間後、ディッシュを培地でゆっくり埋める。
35mmディッシュには2-3mLを50mmディッシュには3-4mLを添加。
※注意:細胞をガラスの表面に密着させた初めの一時間は蒸発を最小限に抑えるためと浸透圧の変化を避けるために適した高さまでディッシュを満たしていることが重要になります。
A.
ポリ-d-リジンやコラーゲンコートはたいていの場合うまく行きますが、独自のコーティングが必要な場合もあります。
これには、コートなしのディッシュに次のようにHClで前処理をして好みのコーティングを行います。
1.無菌状態で1NのHClを250μLとってコートなしの測定ホール10mmディッシュに、500μLとってコートなしの測定ホール14mmディッシュに、1mlとって20mmディッシュにいれます。
2.15分後、HClを洗浄して、3回リン酸バッファー(PBS)でディッシュを洗浄し、さらに2回、超純水で洗浄します。
3.好みのコーティングをします。
4.同様の量の細胞培地(ガラスボトムディッシュの基本的な使い方 2を参照)をディッシュにいれてガラスの表面を平衡(pre-equilibrate)するために細胞を塗ります。37℃で15分間養生します。
A.
グリッド付のカバーガラスの使用目的は、特定の細胞を時間を追って追跡するために使用されます。例えば、個々の細胞をマイクロインジェクトして、インキュベーターに戻し、一定の時間ごとに観察をすると、グリッドに独特なアルファベットと数字座標が示してあるので、各細胞の変化が認識できます。グリッドにはBellco Glass社のカバースリップ(gridded Bellco Glass)が使用されています。グリッド付の標準的なカバースリップの品番は、P35G-1.5-14-CGRD と P50G-1.5-14-FGRDです。
グリッドサイズ:P35G-1.5-14-CGRID とP50G-1.5-14-FGRIDのグリッドは、独特のアルファベットと数字からなる番号がついた520個のマス(升目)からできています。
各マスの大きさは600μm x 600μmで線の太さは20μmです。
グリッドの視覚化 :グリッドは10倍の明視野対物レンズで容易に観察することが出来ます。
対象の細胞を観察するためにより高い倍率に切り替えたり蛍光対物レンズを使用することも出来ます。
しかし、グリッドはこの高倍率のままでは、又は蛍光対物レンズでは観ることが出来ません。
グリッドが見えなくなったら :細胞の Confluent monolayer (単分子層) は概して成長によりグリッドを覆ってしまう為に、グリッドをみる事が困難か又は不可能です。
もしも細胞が成長し重なり合ってグリッドが見えなくなるようなら Part # P-35G-1.5-14-CGRD-D
を使用して、グリッドがディッシュの外側に印字されたものを使用してください。
そうすればカバーガラス上で成長する細胞に影響される事はありません。
このディッシュを使用する場合は、対象の細胞をセットしてカバースリップの底側に焦点を合わせるように調整してください。
CLEM :光-電子相関観察(Correlative light electron microscopy:CLEM) ): P35G-1.5-14-CGRDガラスボトムディッシュはCLEMに適していますが、P35G-1.5-14-CGRD-Dは細胞とグリッドが異なる焦点面にあるため、CLEMにはお勧めできません。
A.
a. 一番の利点は一つのプレート上において同じ環境下で6.12.24.48.96の培養を一度に行うことが出来る。ハイスループット・ハイコンテントスクリーニングに最適である。
b.マルチウェルプレートを使って分析することは一つのプレート上で複数のウェルを一度に操作が出来るために合理的である。
c. いくつかのアプリケーションを操作するのに細胞の処理(例えば照射など)がマルチウェルプレートを使うと簡素化することが出来る。
d. マルチウェルプレートの小さなウェルでは少量の貴重なサンプルを取り扱うアプリケーションには最適である。
A.
はい、できます。しかし、たいていの場合は取り外すことなく細胞が観察できます。
長期保存など、もしカバースリップの取り外しが必要な場合は、次のようにしてください。
1.品番PDCF OS 30を用意する。
2.ディッシュの蓋を逆さまにする。
3.1mLのPDCF OS 30を逆さにした蓋にとる。
4.ディッシュの底を蓋に入れる。カバースリップに溶液が触れていることを確認する。
5.ディッシュを液につけたまま室温で45分間放置する。
6.カバースリップの底をペーパータオルで拭いて乾かす。
7.ディッシュをきれいな所に置いて、ピンセットでカバースリップの端を押してディッシュから取り外す。
注: 上記の方法に従えば、OS30液は細胞には接触せず、細胞に影響がなく汚染もおこりません。
ガラスボトムディッシュと顕微鏡との相性や技術的なことについて
ガラスボトムディッシュの特性について
A.
殆ど全ての対物レンズには№1.5(0.16-0.19mm)のカバーガラスが適しています。
開口数(NA>0.7)が高くなるにつれ、№1.5の厚さのカバーガラスを使用することがより重要になります。
他のカバーガラスを使用すると光学的歪を起こしたり、結果を得られないこともあります。
※一部のアプリケーションによっては例外もあります。
それらの理由により殆どの顕微鏡観察では№1.5のカバーガラスが使用されています。
超高解像度の顕微鏡技法の為にParts№に0.170がつく№1.5のカバーガラスを取り扱っています。
(例えばP35G-0.170-14-Cなど)。
実際のカバーガラスの厚みとParts№の一覧表は下記の通りです。
Coverslip No. |
Thickness (mm) |
0 |
0.085-0.13 |
1.0 |
0.13-0.16 |
1.5 |
0.16-0.19 |
2.0 |
0.19-0.23 |
0.170※ |
0.165-0.175 |
※P35G-0.170-14-C
A.
ガラスボトムディッシュ・マルチウエルプレートの本体はポリスチレンでできています。
従って、有機溶剤との使用は制限があります。次の化学適合性をご覧ください。
Solvent 溶剤 |
Chemical Compatibility 化学適合性 |
Acetone |
Poor |
Ammonium hydroxide (1N) |
Fair |
Ammonium hydroxide (25%) |
Fair |
Aniline |
Good |
Butanol |
Good |
Chloroform |
Poor |
Dimethylformamide |
Poor |
Dimethylsulfoxide(DMSO) |
Poor |
DMSO/H2O (20/80) |
Good |
Dioxane |
Poor |
Ethanol |
Good |
Hexane |
Poor |
Hydrochloric acid (25%) |
Good |
Hydrochloric acid (concentrated) |
Fair |
Methanol |
Good |
Methyl ethyl diketone |
Poor |
Methylene chloride |
Poor |
Nitric acid (25%) |
Poor |
Nitric acid (concentrated) |
Poor |
Sodium hydroxide |
Good |
Toluene |
Poor |
Xylene |
Poor |
A.
型番「P35G-0.170-14-C」のディッシュは通常の「P35G-1.5-14-C」の(カバーガラスの厚み= 0.175 +/ 0.015 mm)に対して(カバーガラスの厚み = 0.170 +/- 0.005 mm)のハイトレラランスのカバーガラスを備えています。
高開口数の対物レンズを用いる共焦点、蛍光発光、GSDIM, dSTORM, PALM 、TIRFなどの超解像顕微鏡法では「P35G-1.5-14-C」のディッシュを使用した時に比べて「P35G-0.170-14-C」で観察した方が高画質になります(下記の画像参照)
例えば、「 P35G-1.5-14-C」を使用した定量計測はz-解像度が ± 17.3% (n=5)であったのに対して「P35G-0.170-14-C 」を使用した定量測定ではZ-解像度 は ± 9.5% でした。
A | ![]() |
B | ![]() |
Figure: 改良されたZ軸の解像 –下記A)とB)を使って副解像粒子を観察したところA)P35G-0.170-14-Cに高解像度が確認されました。
A) P35G-0.170-14-C and
B) P35G-1.5-14-C glass bottom dishes.
「175nm PS-Speck」とラベルの貼られたFITC(フルオレセイン)副解像粒子を5ul ガラスボトムディッシュのウェルに入れ乾燥させた後、200ulの水を加えて、オリンパス社のUPLSAPO 60x(NA=1.0)水浸型の対物レンズ を装着したツアイス社の LSM510 共焦点顕微鏡を使用して粒子を観察しました。
Figures and measurements courtesy of Teemu Ihalainen, Ph. D., University of Jyvaskyla, Finland (2008).
コーティングについて
A.
処理していないガラス及び細胞は両方ともマイナスの電荷を持っています。
ポリリジンは、ガラス表面がプラスの電荷を持つように表面に塗ってあります。
これにより、ガラス表面と細胞間の静電気による吸引力が増加され、細胞の吸着が良くなります。
Poly-D-lysineが好まれる理由は、D-enantiometer(エナンチオーマー=鏡像異性体)は
天然型のL-enantiometer(エナンチオーマー=鏡像異性体)より酵素による破壊がしにくいからです。
これ以外はPoly-L-lysineとPoly-D-lysineの差はありません。
特注品について
A.
7mmの測定ホールのガラスボトムディッシュは標準品であります。
(型番 # P35G-1.5-7-C、 P35G-0-7-Cなど)。
30mmの測定ホールの50mm, 60-mm,100-mmディッシュ (型番 #P50G-1.5-30-F, P60G-1.50-30-F, P100G-1.5-30-F) も標準品です。
これらのディッシュでは広範囲で細胞の培養をすることが出来ます。
とても高価な貴重な試薬などを使う時には特注品で5mmの測定ホールのディッシュもご提供することが出来ます。 (型番#: P35G-1.5-5-Cなど)
A.
納期: 特注品は通常、受注後2~3週間以内に作ることが出来ますが、ガラスボトム製品は6週間に一度まとめて滅菌をしています。そのため、滅菌日の都合で3~8週間かかってしまう場合もあります。
(日本からの注文の場合、上記の期間にプラス2~3週間ほどかかります。)
滅菌せずにユーザー様自身で紫外線やエタノールでディッシュを滅菌していただけると
納期は短縮することが出来ます。
(例えば細胞培養フードの中で40分間UVランプで照射するか70%のエタノールに30分間浸漬するなど)
特注料金: 米国規格3箱以上の注文には特注料金はかかりませんが、3箱未満の注文には特注料金が加算されます。※詳細についてはお気軽にお問い合わせください。